ちゅらデータには、大学で数学を学んできた社員がいます。今回、その3名にデータ分析業界での数学の今後などをゆる〜く伺ってみました!
- 兼城 大
データアナリスト / 3 ヶ月の育休経験者
以下 dai 侍 - 中西
データアナリスト / 道やバスでよく目撃される
以下 中西
- k. ueda
データサイエンティスト / ちゅらデータの良心担当
以下 k. ueda - 幸地 彩子
採用広報 / 虫と鳥が好きです
以下 こうち
どうしてちゅらデータに入社したんですか?
今日は大学で数学を専攻 / 副専攻していたお三方に集まっていただきました!
入社の経緯から始めて、データ分析の会社で数学って必要? とかそういう部分までゆるくお話いただければと思います。
まずは某から……
某は、前職と掛け持ちしながらアルバイトで勤め始めて、2020 年 4 月に晴れて正社員登用されたでござる。
元々は高校の数学教員になろうと思っていたでござる。
しかし、当時塾で一緒に働いていた同僚から「数学を活かしたセクシーな職業があるらしいぞ」と聞いて、足を踏み入れたのがデータサイエンスの世界でござった。
ただ、当時はプログラミングもほとんど触ったことがなく、数学しかやってなかったのでほとんどの企業から門前払いを喰らった……
そんな中、ちゅらデータは「飲み会があるのでよかったら来ませんか?」と言ってきたので足の赴くまま飲み会に行き、真嘉比社長や社員の方々と色々な話をして、ここでアルバイトとして働かせてくださいと直談判をしたのでござる。
そこから約 1 年半かけて成果を残した結果正社員として登用され、現在に至ったで候。
2019 年の 4 月に入社しました。ちゅらデータの元社員から Twitter でダイレクトメッセージを受け取ったことががきっかけでした。
見てみたらまぁ給料もいいし、それまでずっと大阪の実家に住んでいたので、どうせ親元を離れるならどこに行っても同じかなと。
実は当時、いろんな人からダイレクトメッセージをいただいてたのですが、給与が一番よかったのがちゅらデータだったので、決めました 笑
もっと情報系をバリバリやっていたらいろんなとこからお誘いが来ていたかも知れないです。
僕はプログラミング経験が浅かったので、「プログラマ」という売り出し方ができなかったので、データ分析の企業っていうふうに限定されたんですよね。
さらに言うと、僕は大学の時にデータ分析もやってないです。
2021 年 10 月入社です。
元々東京で組み込みエンジニアをやっていたのですが、趣味で数理統計の勉強をする中でデータ分析に興味を持ちました。
それで転職の準備のために1年半ほど無職をした後、エージェントさん経由で入社しました。
データ分析の業界に転職するために、無職の勉強期間を設けたんですか!?
はい、結構な決意で業界にきました 笑
勉強に丸々 1 年使って、そのあと半年で転職しました。
就職事情あれこれ
これはこれは……ちゅらデータにきた経緯が皆さんそれぞれで興味深いですね。
数学科って、就活がちょっと特殊かなと思います。
昔は、金融系とか保険会社が就職先として多かったと聞いています。周りの体育会系の人にしごかれて辛い思いをするっていうルートがあったらしいです。
でも最近は、Python や R のような使いやすいツールがあるので、それでデータ分析をする就職の道が増えたようです。
拙者は学部で心理学を専攻し、副専攻で数学を履修して、大学院の時に数学科に転科したでござる。
博士課程に進んで研究者の道を志す方もいますね。
僕の知り合いでも、アカデミアに進もうとしていた人は何人かいました。
けど最近は数学に限らず大学全体の雇用が厳しいので、そのままアカデミアを離れてちゅらデータのような企業に就職する人が昔よりも多くなっているんじゃないかなと思います。
キャリアを変えるとき、ちゅらデータをぜひ思い出してほしいですね!
今どんな仕事をしていますか?
色々なキャリアがある中でちゅらデータに来たわけですね。
今はどんな仕事をしているんですか?
最近は AWS を軸としたデータエンジニアリング(データ分析基盤構築系)の案件に関わっているでござる。
入社 1〜2 年ほどはデータサイエンス研修の講師を主に担当したでござる。具体的には、機械学習・ディープラーニングの理論的な部分と、異常検知、時系列、最適化、ベイズ統計といった応用研修でござる。
中西さんと一緒に広告の効果検証をしています。広告のターゲット層や、広告の効果を調査しています。
以前は、需要を予測して仕入れを最適化するような案件や、工業系の生産最適化の案件に関わっていました。
他にもかなり研修資料を作っています。因果推論やベイズ統計だったり、社内向けにトポロジカルデータ分析なども扱います。
僕は Python と SQL を主に使っています。
どちらも前職では使ったことがなく、無職期間に軽く触ったのみでしたが最近は少し慣れてきました!
仕事は、k. ueda と一緒に広告の効果検証をしているほか、実は dai 侍とも研修資料をつくったりしています。
あまり知られていませんがちゅらデータの事業のひとつに研修事業がありまして、全社的なクライアント社員のデータリテラシー向上を目的とした研修資料を作っています。
Qiita でバズった数学の記事
皆さん、学んできたことを活かしながら多様な業務に関わっているんですね。
ちゅらデータの数学ジャンルといえば、k.ueda さんの Qiita の記事がバズりましたが、dai 侍さんと中西さんは読んでどう思われましたか?
率直な感想として、色々な方が参考にしたいと思う記事を書くのがすごいでござる。
一般的に「線形代数」と「微積分」と「統計学」を学んでおけば、データサイエンスを学ぶ上で問題ないと言われるところに対して、それ以外の切り口での学習方法を提示したのがみんなに刺さったのかなと思ったで候。
情報幾何の話は全く分からないので、この記事を参考に勉強してみたい也。
人生は一生勉強だと思うので、何を勉強するか良い指標だと感じる一方、学ぶことがまだまだあるぞ! と記事を読んで思ったので「先は長いなあ……」という感想を持ちました。
内容については、実務で使う知識というよりは統計学を芯から理解するための知識、という視点で書かれていると思いました。
この業界で生きていく決意で 1 年半かけて転職してきたので、いずれは全て習得したいですね!
ありがとうございます! 感想嬉しいです。
アウトプットをする理由は「人が少ない分野」の経験から
上田さんは Qiita の記事のほかにも社内勉強会や YouTube などで積極的にアウトプットしてらっしゃいますが、どんなモチベーションでやっているんですか?
目的のひとつは自分の中での知識の整理です。Qiita では 9 割方数学記事を投稿していますが、あれは自分で学んだことを記録しておくために書いています。
もうひとつは、記事を読んで面白そうだと思ってくれる人を見つけるためです。
ああいう記事を書くと内容に興味関心を持った人がちゅらデータに集まってきてくれるんですよね。 記事を読んだ人が来て「面白そうだからこういうことをやってみたい」と思ってもらったり、「この程度しかやってないのか、俺が正してやろう」って殴り込んでもらったりすれば採用の面でも効率的なわけです。
実際に、僕の記事を見て採用面接を受けている人がいる状態までつくれているので、アウトプットを通じて、何かきっかけづくりができればいいかなと思ってます。
ちゅらデータは各職種で積極採用中ですから、今回の記事も読んだ人が応募するときに判断材料になることを期待しています。
今後はどんな内容で記事を書きたいと思っていますか?
ネット上にあまり記事がない分野がそこそこあるので、そこを突いていきたいです。
僕が書いた中でもゲーム論的確率論やモデル検査の話は拾える情報の敷居が高いので、公共的なねらいを込めて、正確性を保ったままとっつきやすい記事を出していきたいです。
自分で学ぶときにそういうものが少なくて不便だったんですよ。
これから学ぶ人にはあんまり不便な思いをしてほしくなくて……
その口ぶりからすると、以前何かあったんですか?
僕、学生時代にものすごく人口の少ない分野(超準解析)をやっていたので、誰かがアウトプットしないと到達するのが大変だったんです。
そういう背景もあって、幸運にも僕がそこで知り合った人たちはアウトプットが活発でした。
僕のいた環境とぜんぜん違う…… ちゃんとした教科書があるから、そういうアウトプットってそれほど必要なかった感じでした。
場の量子論をしていたのですが……
場の量子論はキラキラしててかっこいいですよね!
かっこいいのも専攻した理由のひとつでした 笑
持論ですが、数学は暗い部屋で数学書と紙とペンだけを持って孤独にやるものだと思っています。
そうしないと本物の理解には辿り着けないと私は考えてます。
もちろん、勉強会やブログ記事から得られることももちろんありますし、アウトプットから得られるコミュニケーションも重要だと思っています!
本当に専門的に数学を理解しようというそういう姿勢になるのは当然かなと思うでござる。
本を 1 冊読むのに 1 年とか 2 年かかるのが数学で候。
1〜2 年かけて、行間埋める読み方をすると、まぁそうなるかなって思うで候。
ん? ちょっと脇道かも知れませんが「行間を埋める」ってなんですか?
数学ではよく使われる言い方でござる。
例えば、命題が与えられていて、これが成り立つ。
それに対する証明は、シンプルな記述しか書かれていないので行と行の間で論理が飛躍しているんでござるな。
なぜその 1 行目から 2 行目に至ったのかがちゃんと自分の言葉で説明できるようにならないと、本当に理解していることにならない。
ちゃんと理解している状態を作るために、ものすごい思考するんでござるよ。
それが「行間を埋める」ということなんですね?
そうです。 逆に、議論が省略されがちな本は「行間が広い」って表現しますね。
行間が埋まっている場合は「親切」って言ったりしますね。「親切だから読みやすいよ」とか。
もう完全に余談ですが、比較的簡単な内容しか取り扱わない数学書は「ラノベ」って呼ばれます。
…… こうやって振り返ると、数学科の文化は特殊かなと思います。
紙とペンがあれば、どうにかなるのも数学です。修士論文ではコンピュータサイエンス寄りの数学をやっていましたが、本文を書くとき以外はパソコンに触りませんでした。パソコンを使ったシミュレーションとかはまったくせずに、数学的理論だけで理論計算機科学をやっていました。
実験がないんですよね、数学は。
数学がわかるとできる仕事
想像するになかなかな光景ですね。
実際、数学を活かした仕事の好例ってどんなことがあるんですか?
ふむ……論文実装でござるかな……
例えば最新の論文とかってライブラリがまだ実装されてないケースが多いでござる。
故にもし最新の論文読んで実装したかったら、某でそのプログラム書くしかないと。そうなったときにその数式を読んで、中身こうだなって理解して、プログラムに起こすっていうところは、最初に論文をコードに起こす上で求められる力として数学は強いなとは思うで候。
数としては多くはありませんが、「この論文を実装してみてほしい」というのは業務でありますからね。そういう仕事が回ってきたときにうまいことできるとすごく楽しいです。
新しい論文を読んで実装するって、研究に近い仕事だと思うんで、やっぱり技術力が高い会社じゃないとできないかなと思いますね。
やってみたいアウトプット
数学力、高めると良いことばかりな感じがしてきました。
外向けに情報発信したことや、これからしたい内容などあればぜひ教えて下さい。
大学時代に量子論の研究で使っていた関数解析という理論があって、この話はそれなりに深く理解しているので、この理論の機械学習への応用についての勉強会を開催しました。
今後の話ですが、数式が応用上何を意味しているのかなども数学書を読むだけではなかなか得られない視点なので、そういうバリューが提供できる分野の話があればぜひアウトプットしていきたいです。
これからやりたいな〜という話になるでござるが……
拙者はいわゆるピュアマスじゃなくて「数学教育」の分野を研究していたでござる。
わかりやすさとか学習の目的設定とか、そういう教育の側面を中心に研究してたので、やっぱり教育に興味があるのでござる。
なので、今自分がやってるデータサイエンスの領域と数学教育っていうのを絡めてアウトプットしたいなぁと思っているで候。
もうちょっと具体的に言うと、一方的な講義形式の授業じゃなくて、生徒が「自分がその数学を作り出した」というような感覚を得られるような……
その状態からさらに「面白い」と思って、もっと数学を通じながら自己探求したいと思わせるような問題設定のアウトプットができればいいなって個人的には思っているで候。
そういう教え方をしている人のことを聞いたことがないんですが、どこにいるんですか?
数学教育の世界にはいるんでござるよ、そういう教育を目指してる人。
1970年代に発表された論文で「オープンエンドアプローチ」という教育理論があるでござる。 ざっくり解説でござるが、解が一意に定まらないように条件づけた問題設定で授業を組み立てて実践することで、生徒が自分の中で発見していく・数学を作っていくような考え方で、高度な思考力を養うことを目指しているでござる。
こういうことを、何らかの形でちゅらデータでできたらすごく面白いと思うで候
数学を学んで得るイイコト
そういう教育を若かりし頃に受けたかった……
数学は「難しいもの・わからないもの」というイメージが世の中で強くて、誤解されている学問かなと感じました。こうちも苦手意識強いです。
数学って言語みたいなもので、アメリカ人やイギリス人が英語を使って意思疎通するのと同じように、科学コミュニケーションは数学の言葉を使って行われます。 数学を含めた科学言語を知らないと、どんどん技術に求められるリテラシーが高度化している世の中に置いていかれるかもしれません。
例えば新型コロナを例に挙げると、シミュレーションの結果が発表されたるする中で、科学言語を知らないと騙されたり勘違いしてしまったりする可能性がどんどん増大していくと思うんですね。なので「知らない」ということはリスクになっていく部分もあるのかなと思っています。
IT 業界については、コンピュータサイエンスに関連して数学的知識が求められることも多いので、これからどんどん情報化・自動化が進んで「人中心」の仕事から「コンピュータ中心」の仕事へ移行していくと、コンピュータのことがわからないといけない傾向はどんどん強くなっていくんじゃないでしょうか。
いまも十分そうですけど、10 年、20 年経ったときに、知らないことで損をするケースがもっと増えていくはずです。
数学を学ぶと良いことがあるのでござるぞ……
実質陶冶では、データサイエンスの理論を学ぶ上で基礎となる数学的知識が身につくこと也。
形式陶冶では、論理的思考と批判的思考と創造的思考が養われること。特に批判的思考は、「常に自分は間違っているかもしれない」という意識があるので、誤りに対しても感情的にならず、誤りを認めて訂正することができるようになるでござる。
そういった素直さに繋がる批判的思考は社会に出ても役に立つのだ。
正しいデータの見方・捉え方だったり、論文読解に必要な数学の素養は今後も必要だと思うなり。
僕からも数学を学んでいてよかった点をお伝えしたいです。
数学はエンジニアリングと違って時間が経っても陳腐化しないのが好きです。例えば微積分学が確立されてから 300 年経っていますが、いまだに現役です。
実際に、実務で古典的な数理統計の教科書に載っている知識がそのまま要求されたことがあります。
一度勉強したことが一生使えるのと、苦手な人が多いので知識が求められ続けると感じます。
数学力はこれで十分ということはあり得ないです、一生勉強ですね。
データ分析業界で求められるこれからの数学
3 人から「俺たちの冒険はこれからだ!」的なクレイジーオーラを感じます。
データ分析は数学の知識が求められることが多い印象がありますが、データ分析業界で求められる数学について、何か思うところはありますか?
これからは、どんどんツールが進化していって、数学を知らなくてもできる範囲が増えて来ると思います。
受託で取っていた仕事の中でも、簡単な数学の範囲で解決できるようなものは削られてしまうでしょうし、大企業では内製化も進んで、仕事としてのデータサイエンスの領域がどんどん狭まってくると思います。
つまり、ツールでカバーできないようなややこしい部分が仕事として生き残るんじゃないかと思っています。 データサイエンスの世界で生き残っていくために必要とされる数学の知識は、ツールの進化に伴って高度化していくんじゃないでしょうか。
これから入ってくる、もうそれがわかった上で勉強してくるような学生に追い抜かれないように努力しないと、10 年、20 年経ったときにどんどん若い世代に食い散らかされちゃいます。
何にしたって勉強は必要ですよ、やっぱり一生勉強ですよ。
数学はツールを使った分析であっても分析結果を説明するために必要なので、データ分析業界の成長に伴って需要は増していくと僕は思います。
拙者は、ビジネスの世界に数学を落とし込む状況がこれからどんどん増えるとは思うでござる。
そういう目線でいくと、いかに数学をビジネスに落とし込むか、というところを追い求めていくアツい未来もあるのかなと思うでござる。
We are Hiring!
お三方、いろいろなお話をありがとうございました! 数学を学ぶことの意味を、自分の中でもう一度探せそうです。
では最後に、ちゅらデータへの就職・転職を考えている方へコメントをお願いします!
ちゅらデータで働く良いところ(待遇 / 業務内容 / 時間の融通 など)→ 好きに暴れ回ってもいいところ
トモダチ、ナロウ、オデ、ナカマ、イッショ
一定のスキルを満たせば、基本的には社員がやりたいことができる環境でござる。
時間の融通も利くので、働きやすい也。給与面でも、県内 IT 業界ではトップクラスに頂戴してると思うで候。
高賃金でやりがいのある仕事を最高の仲間たちと共に進められる良い職場であるぞ。
クレイジーな挑戦者、待つ!!
社風としては、会社組織が成立するギリギリのフランクさを攻めていますね。
私用で中抜けは普通ですし、お昼寝もできます。好きな時間に働ける環境です。
サラリーマンとして働くのが向いていないと思った方、ちゅらデータなら居場所が見つかるかもしれません。
▲ 社内勉強会の様子